|
|
大串半島の突端、大串岬の崖下に釣舟が5、6艘、帆をかけのんびりと春の海に釣り糸を垂れている。岬に桜の花が舞い、風に乗ってひとひら、またひとひら青い海に消えていく。
海峡の対岸で白浜山(小豆島)が春霞にまどろみ、はるか東方で鳴門大橋が白々とした海面に浮いている。西方の海道を阻む小島は高島。その南に庵治半島が長く突き出、半島越しに屋島の霊峰が僅かにのぞいている。
大串半島は庵治半島の東に位置し、西方の志度湾、東方の小田湾を分ける瀬戸内海に突き出た半島である。瀬戸内海の眺望に優れ、藩政時代には狼煙台がおかれたところ。志度湾に浮かぶ見事な筏群は、ハマチ、カキ、ノリの養殖筏。
狼煙台は原型がよく保存されており稀有。釜の直径が5メートルもある巨大なものである。異国船や藩主の御座船を見つけると、狼煙をあげ或いは中継し高松城下にいち早く知らせる役目を負っていた。高松藩所有の2人がかりの櫓を52挺備えた御座船・飛竜丸(千石船)は、諸藩の御座船中最も豪華なものだった。屋形は二階建て。障子やふすまに金銀を混ぜた絵具で花木が描かれていた。鳥船や水取船などを従えた御座船の船団を見つけ、狼煙に火入れする者の緊張感が伝わってくるようである。
半島の突端回りはそわい(暗礁)が多いところ。そわい回りは概して好漁場である場合が多く、釣舟が集中するのもそのような事情によるものだろう。鼻に「そわい観音」が祀られている。
大串半島は、近年、ワイン工場や温泉、収容人員1万人規模のギリシャ風野外音楽広場、サイクリングターミナルやテニスコート、周遊遊歩道などの野外活動施設が整った。海洋性の恵まれた気候と高松や京阪神に近く、周年人出が絶えないリゾート地である。−平成16年4月− |
|
|
|